親を恨む気持ちが本心なのか『母さんがどんなに僕を嫌いでも』感想
ずっと気になっていた本『母さんがどんなに僕を嫌いでも』を読みました。
ノンフィクションの本です。
あらすじの一部分
主人公のタイジは幼いころから虐待を受けて育ちました。
17歳で家を飛び出して、のちに親友となる仲間との出会いが、タイジの人生を変えていきます。
虐待を受けて育ったタイジは、本当の自分を出したら恨みがましくなるし、自分を隠そうとしたら作り物みたいになることで悩んでいました。
タイジは仲間のキミツに「作り物」と「うらみ節」の板ばさみから、どうやったら脱出できるかを相談しました。
するとキミツは、
「本当の自分をさらけ出そうとするとうらみ節になっちゃうって、なんだかヘンだよね。
親をうらんだりしているうたちゃん(タイジ)が、本当のうたちゃんなの?
なんか、ちがう気がする。もっとその奥に、本当の本当のうたちゃんがいるような気がしてならないんだけど」
引用元:歌川 たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
と言います。
それはタイジに大きな気づきを与えることになります。
虐待を受けて育ったタイジがどうやって立ち直っていくかが書かれています。
親を恨む気持ちが自分の本心か
親を恨むとか、許せないとか、自分が願ってそんな状況になっている人なんているのかなと思います。
色々傷ついていくうちに、自分の本当の気持ちを見失っているかもしれないと思うのです。
この本の感想で、こんなひどい虐待にあったのにどうして親を許しているのかが不思議と書いているのを見たけれど、親を許しているのは、タイジが前を向いて歩き始めたからかもしれないと私は思います。
タイジには、大切に思ってくれるばあちゃんや、自分を受け入れてくれる仲間の存在がありました。
自分自身が前を向き始めると、許せない気持ちが自然に薄れていくような気がします。
自分の感情が、そこまで親で支配されなくなるからです。
どうやって許していくのかというと、自分を傷つけた相手(親)に関心を向けるよりも、自分を支えている周りの人に関心を向けていくことかもしれないと私は思っています。
主人公のタイジは人懐っこいなと私は思いました。
実際に作者さん自身も人が好きと言っていました。
人を恨む気持ちが、自分の本心かどうかは分からない。
人が好きだと思う本来の自分に気がついたことが、タイジを支える仲間との出会いを引き寄せたと感じます。
私の場合
私は叩かれて育ったけれど、虐待は受けていません。
親の過干渉などにより、子供の頃から体調に色々な異変はありました。
大人になっても生きづらさを抱えていて、そこから立ち直ったのは、人との関わりがきっかけだったと感じますが、タイジのような人生を変える出会いが私にあったかどうかは微妙です。
私は、親友と呼べる人は多分いなくて、友達がいるかもちょっと微妙なところです。
まぁ仲間はいます。恐らく。今のところ。
そんな感じの人間関係だけど、私が立ち直るには十分だったのです。
誰かとおしゃべりが盛り上がったとか、それだけで心が明るくなったし、些細なことだったと思います。
だけどその些細な積み重ねが、私を勇気づけていました。
立ち直った今思うことは、人との関わりを軽んじてはいけない、ということです。
人生を変えるような特別な出会いがなくても、人との関わりをあきらめないことが、何よりも大切だと私は思っています。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』とても素敵な本でした。